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2023年7月2日説教要旨「忘れられた恵み」

masuda4422020

ルカによる福音書 17章11~19節 桝田翔希牧師


先日、研修で訪れた北海道で滞在を伸ばして1日観光をしました。北海道を訪れるのは初めてのことでしたが、忙しさにかまけて下調べもしないままでした。北海道名物とは何かと思って過ごしていると、「ハスカップ」という果物を頻繁に見ました。これはブルーベリーのような果物で、北海道には自生しているのだそうです。よく売っていたので、お店で「北海道ではよく食べられるのか」と聞いてみますと、元々は限定的な果物であったと聞かされました。安易な質問をした自分に気づき反省をしました。観光客がよく目につくようなものだけで、北海道を判断しようとしていました。人間の特性としてカテゴライズしたがるというものがあり、「ホモ・カテゴリクス」と呼ばれるものがあります。これは「何事も分類してカテゴリ化しようとする人間(キム・ジヘ『差別はたいてい悪意のない人がする』2021年、p.46)」を指す言葉で、パターン化して安心しようとする人間の心情に関連しています。カテゴリ化とは、一見すると便利なものですが固定概念やステレオタイプへとつながっていきます。

重い皮膚病を患った10人が、村の外からイエスに声を掛けました。聖書時代にあって「レプラ(ギリシャ語)」や「ツァーラト(ヘブライ語)」と呼ばれる病にかかった場合、宗教的に排除されるということが起こりました。これらの単語は、ハンセン病にあたると理解された時代もありましたが、現代では特に限定できない「規定のやまい」と考えられています。10人の患者はイエスによって、祭司のところに行くまでもなく癒されました。そしてこの10人のうち1人だけがイエスのもとに帰ってきて感謝をしました。この物語を読むとき、病が癒されてどこかに行ってしまった9人を思うと、少しイエスに対して失礼なのではないか、とも思えるものではないかと思います。福音書記者による書き方も、9人に対しては無礼者のように描いているようにも思われます。しかし、批判の言葉があるわけでも無く、物語はイエスによる「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを救った。」で締めくくられます。

聖書は重い皮膚病に悩んだ10人について、病であったということしか記録しませんでした。また、この物語を読む私たちも、病であったということ以外にこの人たちに注目しようとしないような気もします。「患者」というカテゴリだけを見て、苦しみや悩みを一般化してしまうように思います。だからこそ、9人が失礼な人のようにも思えるのではないでしょうか。病人なんだから、感謝して当たり前である、というような考えです。しかし、そんなに一言では表すことのできない、苦悩や人生が10人分あったのです。そしてイエスは「信仰があなたを救った」と語ったのです。この人たちの一人一人の心の中に、大切なものがあったということです。だからこそ癒されたのです。私たちは多様な一人ひとりの中の一人であって、私たちに神が与えた大切なものによってそれぞれが立ち上がり、いきていくことができるのです。

 
 
 

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